Levi's 70505 "Big E" — ブランドの絶頂期に生まれたデニムジャケット
Levi's 70505、通称 "Big E"。Type III の名で知られるこのデニムジャケットは、1962年に登場し、1971年に小文字eへ切り替わるまでわずか9年。なぜ "Big E" だけが特別扱いされるのか、その理由を整理します。
"Big E" が指すもの
Levi's の赤タブには、ブランド名の "Levi's" が縫い付けられています。1936年にこのタブが導入されて以来、長らく「LEVI'S」と全て大文字で書かれていました。これが 1971年頃に "Levi's"(eが小文字) に変わります。
つまり、LEVI'S(大文字E)= Big E、Levi's(小文字e)= Small e。
この変更を境に、ヴィンテージデニムの市場価値は明確に分かれます。Big E は1971年以前を意味するからです。
70505 とは何か
70505 は、Levi's のデニムジャケットの1つの品番です。Type 1 / Type 2 / Type 3 という現在通称される3世代のうちの Type III に相当します。
- Type I(506XX):1900年代〜1950年代初頭。シンチバック・1ポケット
- Type II(507XX):1953〜1962年頃。2ポケット・プリーツ廃止
- Type III(70505 / 557XX):1962年〜。Vの字ステッチ、サイドシームのスリム化
70505 は1962年に登場し、瞬く間にデニムジャケットのスタンダードとなりました。Vステッチの胸ポケット、シャープなサイズライン、リーバイスらしい "縫いで魅せる" デザインが世界中に広まったのもこの世代からです。
なぜ "Big E" なのか — その9年に何が詰まっているか
Big E の70505は、わずか 1962〜1971年 の9年間しか作られていません。さらにこの時期は、Levi's にとって素材・縫製・染色の全てが頂点にあった時代と評価されています。
素材
- 13.75oz 前後の打ち込みのしっかりした コーンミルズ製赤耳デニム
- ヴィンテージ独特の タテ落ち(縦糸の偏った色落ち) が起きやすい
- 染色工程に銅成分が残り、独特の青みが時間と共に表に出る
縫製
- シングルステッチ中心
- チェーンステッチが裾と内側に残る
- ボタンとリベットの "刻印" の深さと位置に時代らしさが出る
文化
1960年代後半は、デニムが "労働着" から "ロックとカウンターカルチャーの服" に変わった瞬間でした。Bob Dylan、The Rolling Stones、Steve McQueen、Andy Warhol — 彼らが着ていたのが、まさにこの Big E の70505です。
Big E の Type III は、ファッションが "労働" から "宣言" に変わった瞬間を、生地の上に焼き付けている。
見分け方の要点
- 赤タブ:LEVI'S(全大文字)か Levi's か。これが第一関門。
- ケアラベル:1971年前後にケアラベル義務化。タグ位置と内容で年代特定。
- 裏ボタン番号:刻印された数字で工場・年代の絞り込みが可能(諸説あり)。
- 赤耳セルビッジ:内側のサイドシームを開いてセルビッジが赤いか。
これらを総合して、信頼できる Big E か、それともリペイントや偽タブの後加工品かを判別します。
いまの市場価格
状態良好な Big E 70505 は、現在 15〜30万円 がひとつの目安。デッドストック級は青天井で、海外オークションでは7桁に届くものも珍しくありません。
ただし、相場と "着るための1着" は別問題です。ハチノスの位置・ヒゲの濃さ・色の抜け方 が自分の好みに合うかどうかこそが、本来の価値判断のはずです。
Kei's Vintage の Big E 個体について
当店では、Big E 個体については タグ・赤耳・ボタン裏番号・縫製のディテールを写真で開示 することを基本にしています。同じ "60年代後期" でも、ある2着を並べると別物。商品ページに細部の写真を載せていますので、隅々まで見てから判断してください。
Tags
More Reading
他の記事
Vintage History 第1回:西部開拓・鉄道・ゴールドラッシュとデニムの起源
1849年のゴールドラッシュから1873年のリベット特許まで、24年間にアメリカ西部で何が起きていたか。地理・経済・人口・労働の条件を順を追って整理し、なぜ「ジーンズ」という発明がこの時期にこの場所で生まれたかを読み解きます。Vintage History シリーズ第1回。
ヴィンテージデニムの育て方ガイド — 洗濯・保管・修理の基本
ヴィンテージのデニムジャケットやジーンズを長く着続けるための、洗濯・干し方・保管・修理の基本。"洗うか洗わないか" 論争の背景から、実務的なお手入れまでまとめます。
WWII〜ベトナム アメリカ軍ジャケット入門 — A-2、N-1、M-43、M-65
アメリカ軍が支給したジャケットは、機能と量産の極限から生まれた "工業デザインの傑作" です。A-2、N-1 デッキ、M-43、M-65 — 4つの代表機を、年代と用途で整理します。